高い位置にある物体は大きな位置エネルギーを持っていて、高い位置から低い位置へ向かって重力がはたらく。このように、重力がはたらく空間での「高い位置」は考えやすい。それでは、静電気力がはたらく空間での「高い位置」とはどのようなものだろうか。
一様な電場Eの中に電荷(電気量+q)を置くと、静電気力F(=qE)がはたらく。ここで、この電荷を静電気力に逆らって距離dだけ動かすと、この力F'(=F)は、
の仕事をしたことになる。このとき、この電荷はWと同じだけの静電気力による位置エネルギーUを持っているという。
それでは、電気量+Qの点電荷が作る電場を考えて、静電気による位置エネルギーUを求めてみよう。万有引力のときと同じように、位置エネルギーの<基準>を無限遠(r=∞)に取ることが多いので、電気量+qの電荷を無限遠から距離rまで運ぶことを考えて、
と求めることができる。
+1Cあたりの静電気力E=F/qを電場といったように、次は+1Cあたりの静電気力による位置エネルギー
を考えよう。これを電位といい、単位には〔V〕(ボルト)を使う。重力が高い方から低い方へとはたらくのと同様に、静電気力は電位の高い方から低い方へとはたらく(ただし、正電荷の場合)。つまり、電位とは、静電気力がはたらく空間における「高さ」を表していると考えることができる。
ところで、保存力がした仕事Wは位置エネルギーの差で表すことができるのだった。これを静電気力に適用してみよう。電位φ(A)のA点から電位φ(B)のB点まで電荷が移動したとき、静電気力がした仕事Wは、
になる。ここで、A点とB点の電位の差を
と表すことにすれば、
となる。このときのV〔V〕を電位差という。
それでは電位の計算をしてみよう。まず、一様な電場Eによって生じる静電気力による位置エネルギーはU=qEdだったから、そのときの電位φ〔V〕は
となる。ところで、この式は
と書き変えることができるので、電場E〔N/C〕の単位として〔V/m〕を採用してもよいことが分かる。
次に、点電荷が作る電場によって生じる静電気力による位置エネルギーはU=kQq/rだったから、そのときの電位φ〔V〕は
となる。
地形図に等高線が書いてあるのと同様に、電位の高さを等高線で表したとき、この等高線を等電位面という。以下に性質を示す。
等電位面という等高線から、上のような「電位の地形図」がイメージできるだろうか。正電荷が山で、負電荷が谷になっている。ここで、E=φ/dという関係を思い出すと、電場Eは電位を縦軸、位置を横軸に取ったグラフの傾きであると予想できる。ただし、電場Eは電位φが高い方から低い方へ向かうので、
ということになる。これを
もしくは
と表す。「grad」は勾配(gradient)の意味。具体的には、グラフの傾きを求める計算が微分だったから、x,y,z方向それぞれについてφを偏微分すればそれぞれの方向についての傾きを求めることができるので、
である。詳しくはまた後日♪
問題
位置(0,0)に+1.0×10-8 Cを置き、そこから3.0m離れた位置(3.0,0)に-2.0×10-8 Cの電荷を置いた。このとき、x軸上で電位が0となるのはどこか。座標で答えよ。
解答
電位が0となる位置を(x,0)とする。原点の正電荷が周囲につくる電位φ1は、
であり、(0.30,0)の負電荷が周囲につくる電位φ2は、
である。電位はスカラー量だから、φ1とφ2の和φはスカラー和(普通の足し算)になる。これが0となる点を探すのだから、
を解けばよい。
①右辺が2/(x-3)のとき、
②右辺が-2/(x-3)のとき、
以上より、答えは(-3.0,0)および(1.0,0)