活動する地球


地球の形と大きさ

 紀元前330年ごろ、アリストテレスは月に映る地球の影から、地球の形が球であると予想した。地球が球形であることは、場所によって北極星の高さが異なることや、沖へ向かう船が下部から水平線に隠れていくことなどからもわかる。紀元前220年ごろ、エラトステネスは地球を球形と仮定し、はじめて地球の大きさを求めた。夏至の日の正午の太陽は、シエネでは天頂に位置し、そこおから925km離れたアレキサンドリアでは天頂よりも7.2度傾いている。このことから、地球一周の長さがおよそ4万6000kmであることが分かる。では、地球は本当に球形なのだろうか。1672年にリシェーは、赤道地域では極地域に比べて振り子時計がゆっくりと時を刻むことに気づいた。このことは、赤道地域の重力が極地域よりも小さいことを意味している。これは自転の影響に加えて、地球が赤道方向に膨らんだ回転楕円体だからであるとニュートンは考えた。その後、緯度1度の差の長さが赤道地方よりも極地方のほうが長いことが分かり、ニュートンの主張が正しいことが証明された。この回転楕円体を地球楕円体という。赤道半径6378kmと極半径6357kmの差21kmを赤道半径で割った値を扁平率と呼び、およそ298分の1とかなり小さい。

ジオイド

 地球の表面は約30%の陸地と約70%の海洋に分けられる。陸地の高さは0~1kmの割合が最も多く、海洋の深さは4~5kmの深さが最も多い。海水面の高さを詳しく見ると、重たい物体が地下にあると引力の影響でわずかに盛り上がる。潮汐や波によっても海面は変化するが、長期的な平均を取ると影響が取り除ける。これを平均海面と呼ぶ。平均海面を内陸に延長して考えたものをジオイドと呼ぶ。ジオイドに最も近い回転楕円体が地球楕円体である。ジオイドの回転楕円体からのずれをジオイドの高さといい、北極で高く、南極で低くなっている。

 また、地球の形を地球楕円体と考えたときの万有引力と遠心力の合力を標準重力と呼び、地形の影響などによる実際の重力からのずれを重力異常と呼ぶ。重力の測定値をジオイド上の値に変換することを重力補正という。まず、地球の中心から離れるほど重力が小さくなるという効果を取り除くフリーエア補正を行う。この補正値と標準重力の差をフリーエア異常と呼ぶ。プレート沈み込み帯などでフリーエア異常がマイナスになる。続いて、測定値よりも高い位置の物質による引力の効果を取り除く地形補正を行う。最後に、測定点とジオイドの間にある物質を標準的な近くの密度と仮定し、その引力の効果を取り除くブーゲー補正を行う。3つの補正をした値と標準重力との差をブーゲー異常と呼び、周囲の物質よりも密度の大きな物質が地下にある場合は正のブーゲー異常が見られる。こうして地下構造を調べることができる。

地球の磁気

 棒磁石が周囲に作る磁場を双極子磁場と呼び、地球の磁場による磁気を地磁気と呼ぶ。地球の磁極の方向は地軸から10度ほどずれている。地磁気の強さと向きは全磁力、水平分力、鉛直分力で表すことができる。水平分力の北からのずれを偏角、地磁気の向きと水平面とのなす角を伏角という。このうち3つが定まることでその場の地磁気が決まることから、これらを地磁気の三要素と呼ぶ。全磁力、偏角、伏角が用いられることが多い。

 地磁気は日変化や永年変化をしている。日変化の原因は、上空の電離層を流れる電流が太陽放射に影響を受け、その電流が地球の自転とともに移動しているからである。外角の流体が移動することで地磁気が生じるという考えをダイナモ理論と呼ぶ。過去には何度も地磁気の逆転が起こっている。最後の逆転は77万4000年前で、その直後の時代がチバニアンと呼ばれるようになった。

 マグマが冷却すると、マグマ内の強磁性鉱物がその地点の地磁気の方向に変化する。この残留磁気により、過去の地磁気を知ることができる。また、強磁性鉱物が海に沈む場合、その堆積物が磁気を持つ。残留磁気によって、その地域の磁場が標準的な磁場から外れた値を持つことになり、これを磁気異常と呼ぶ。海底の磁気異常を調べると縞模様が見られたことから、過去に何度も地磁気が逆転していることが分かった。この縞模様が海嶺を挟んで対称的に分布していることが、大陸移動の証拠となった。

 地磁気は太陽風と呼ばれるプラズマの流れから地球を守っており、太陽風の影響が及ばない領域を磁気圏と呼ぶ。磁気圏は大気圏側につぶれた形をしており、太陽の逆側の磁気圏は太陽側の数百倍になっている。磁気圏の内側では容姿や電子が地球の磁力線にとらえられていて、これらが二重のドーナツ状に地球を取り巻いている。この帯をバンアレン帯と呼ぶ。4000kmの高さの内帯には陽子が多く、2万kmの高さの外帯には電子が多く存在している。太陽風が高速・高密度になると磁気圏が押されて縮み、激しく変化する。これを磁気嵐と呼ぶ。磁気嵐が生じるとプラズマが地球の磁力線に沿って高緯度地域の大気に侵入し、そこで大気粒子と衝突して発光する。これをオーロラという。

地球の内部構造

 地球の内部構造は地震波によって調べられている。地中を伝わるP波やS波が重なって地表を伝わる波を表面波と呼ぶ。表面波には、水平方向に大きく揺れるラブ波と、水面波によく似た動きをするレイリー波に分けられる。表面波は減衰しにくい。地震波が観測点に到達するまでの時間を走時、走時とシンオウ距離のグラフを走時曲線と呼ぶ。モホロビチッチは約50kmの深さで地震波の速度が急激に変化することに気づいた。この面をモホロビチッチ不連続面、その上部を地殻、下部をマントルと呼ぶ。遠くの地震では震央距離として角度を用いることがあり、これを角距離と呼ぶ。103~143度の範囲にS波が届かないことが知られていた。これをシャドーゾーンと呼ぶ。これはS波が伝わらない液体の層があることを示しており、深さ2900~5100kmのこの層を外核、その内側の固体の層を内核と呼ぶ。地殻は大陸地殻と海洋地殻に分けることができる。大陸地殻の上部は花崗岩質、大陸地殻の下部と海洋地殻は玄武岩質である。マントルは深さ400~600kmの遷移層を挟んで上部マントルと下部マントルに分けられる。上部マントルはかんらん岩からなる。

地球内部の熱

 マントル、外核、内核は構成物質が異なるが、これらの境界で密度も不連続になっている。中心の密度は13g/cm3、圧力は400万気圧になっている。温度はマントルと外核の境界で約3000度、中心で約5000度である。地表付近では100mあたり約3度ずつ温度が上昇していく。これを地下増音率または地温勾配という。地表ほど温度が低いのは、表面から熱が似てているからである。この熱量は0.087 W/m2で、これを地殻熱流量と呼ぶ。地殻熱流量は大陸地域よりも海洋地域のほうが大きい。海洋地域の中でも中央海嶺で最も大きく、海溝で最も小さいが、火山フロントの近くでは大きい。地球内部の熱源には、地球誕生時に蓄えた熱エネルギーと、放射性同位体が崩壊する際に放出する熱エネルギーの2つがあり、だいたい同じ割合である。

プレートの運動

 地球の内部は温度が高く、1000℃程度になるとマントル物質が流動性を持つようになる。およそ100~300kmの深さである。これより下の流動性を持つマントルをアセノスフェア、それよりも上部のマントルと地殻を合わせた硬い層をリソスフェアと呼ぶ。硬いリソスフェアはプレートとも呼ばれ、流動性を持つアセノスフェアの上を移動する。世界の震央分布を見ると、ある程度つながった線上に分布している。これがプレートの境界である。地球の表面は20枚程度のプレートで覆われており、それらのプレートが互いに運動することで境界にひずみがたまる。このひずみを地震として開放している。このような考えをプレートテクトニクスと呼ぶ。

 プレート境界は発散境界、収束境界、横ずれ境界に分けることができる。発散境界では中央海嶺が作られ、プレートが引っ張られることでできた割れ目を埋めるようにマグマが上昇して新しいプレートが誕生する。中央海嶺で誕生したプレートは移動する間に冷えて重たくなり、海溝で地球内部へ沈み込んでいく。日本は太平洋プレート、北アメリカプレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートという4枚のプレートの境界に位置し、日本海溝や南海トラフが存在する。日本列島のように、海溝に平行に並んだ島々のことを島弧と呼ぶ。軽い大陸プレートどうしが衝突すると、どちらも沈み込めずにヒマラヤ山脈のような大山脈を作る。発散境界どうしをつなぐ横ずれ境界では、トランスフォーム断層が作られる。アメリカのサンアンドレアス断層が有名である。

 沈み込んだ冷たいプレートは670km付近にとどまるが、ある程度たまるとマントル中を外核付近まで落下し、それに伴って温かいマントル物質が上昇する。このような流れをスーパープルームと呼び、このようにマントル物質が地球の内部を循環しているという考えをプルームテクトニクスと呼ぶ。

地震のしくみ

 地震はプレートの運動によって蓄積されたひずみが短時間で解放される現象である。岩石の破壊開始点を震源、その直上にある地表の点を震央と呼ぶ。前震や余震があることが多く、規模が最も大きいものを本震と呼ぶ。地震の揺れの大きさは、日本では10段階の震度で表されている。地震の規模はマグニチュードで表され、最大振幅や断層運動のエネルギーによって表される。マグニチュードが2増えるとエネルギーが1000倍増える。P波が到達してからS波が到達するまでの時間を、初期微動継続時間と呼び、震源距離はこの時間に比例する。この関係は大森公式で表される。これを使って3か所の観測点からの震源距離を求めると、震源の位置が決まる。マグニチュードが9を超える超巨大地震はどれもプレート収束境界で起こったものだが、地震はプレート内部でも生じる。沈み込む海洋プレートの内部で生じる地震は深発地震と呼ばれ、面上に分布する。この面を和達・ベニオフ帯と呼ぶ。二重に分布していることもあり、二重深発面とも呼ばれる。

断層のずれ

 地層や岩石がある面を境にしてずれた構造を断層と呼ぶ。縦ずれ断層と横ずれ断層があり、縦ずれ断層は正断層と逆断層に、横ずれ断層は右横ずれ断層と左横ずれ断層に分けられる。プレート発散境界では正断層型の地震が、収束境界では逆断層型の地震が起こりやすい。断層に力が加わると地震が発生して断層がずれ、地震波が生じて地表を揺らす。P波の初動記録を調べることで、押しと引きの分布が得られる。断層が地表に現れたものは地震断層と呼ばれる。最近数十万年間に繰り返し活動し、将来も活動する可能性のある断層を活断層と呼び、日本には2000個以上が存在している。

 日本の海岸沿いには、海面から数メートル~数十メートルの高さのところに水平な面が発達している場所があり、海岸段丘と呼ばれる。大きな河川には海岸段丘が現れる。地層が圧縮力により波状に変形した構造は褶曲と呼ばれ、上に曲がった部分を背斜、下に曲がった部分を向斜と呼ぶ。現在も成長を続ける褶曲を活褶曲という。

火山のしくみ

 地下深部のマグマは周囲の岩石よりも密度が小さいため、上昇して数kmの深さにマグマだまりを形成している。マグマだまりがゆっくり冷却すると深成岩となり、大規模なものはバソリスと呼ばれる。割れ目を通って上昇したマグマが冷えて固まると、岩脈や岩床ができる。地層を横切って貫入している方が岩脈、地層に平行に貫入している方が岩床である。マグマだまりで圧力が低下するとマグマからガス成分が分離して気泡ができる。気泡ができると体積が増大し、圧力が高まり噴火が生じる。火山の噴火によって放出される物質を火山噴出物と呼び、溶岩、火山砕屑物、火山ガスなどからなる。火山砕屑物のうち64mm以上のものは火山岩塊、2mm以上のものは火山礫、それ未満のものは火山灰と呼ばれる。多孔質で白っぽいものは軽石、黒っぽいものはスコリア、紡錘状のものは火山弾と呼ばれる。マグマは、圧力が下がることで融解してできる場合と、高温のマントル物質によって融かされてできる場合がある。このとき、一部の鉱物が融け残る場合を部分融解という。水が加わることでも融点が下がって融解が生じる。日本のようなプレート沈み込み帯では鉱物から生じた水が融点を下げ、岩石が融解しやすくなっている。火山が最も多いのは中央海嶺で、噴出したマグマが枕状溶岩を形成している。次に多いのはプレート沈み込み帯で、海溝からおよそ100~300km離れた場所に火山が並ぶ。最も海溝に近い火山をつないだ線を火山フロント(火山前線)と呼ぶ。他には、ハワイ島のようなプレート境界以外でも火山ができることもある。これをホットスポットという。

火成岩の分類

 マグマが冷えて固まった岩石を火成岩と呼ぶ。岩石を形づくる溶岩鉱物には、かんらん石、輝石、角閃石、黒雲母、長石、石英などがある。大部分の溶岩鉱物はケイ素や酸素を主成分としているので、ケイ酸塩鉱物ともいう。ケイ酸塩鉱物は、1個のケイ素が4個の酸素に囲まれたSiO4四面体が基本になっている。かんらん石は、この四面体の間に鉄とマグネシウムが自由に配置された固溶体になっている。輝石は単一の鎖状、角閃石は二重の鎖状、黒雲母は網状、石英や長石は立体的に四面体がつながっている。ケイ素と酸素のみでできているのが石英、アルミニウムなどを含むのが長石である。石英や長石は白っぽい珪長質鉱物、色がついている鉱物を苦鉄質鉱物という。苦いという字はマグネシウムを表している。マグマが地表近くで急激に冷えてできた火山岩には、固まる前からマグマに含まれていた斑晶と、細かい粒の石基からなる斑状組織になっている。マグマが地下深くでゆっくり冷えてできた深成岩は、鉱物の結晶が大きく成長できるので、粒径のそろった等粒状組織になる。火成岩は、苦鉄質鉱物の割合が多い順に超苦鉄質岩、苦鉄質岩、中間質岩、珪長質岩に分類できる。火山岩は、二酸化ケイ素の割合が少ない方から順にコマチアイト、玄武岩、安山岩、デイサイト、流紋岩と呼ばれる。深成岩は苦鉄質鉱物を多く含む黒っぽい方から順にかんらん岩、斑れい岩、閃緑岩、花崗閃緑岩、花崗岩と呼ばれる。地球内部で高温高圧に置かれた岩石は固体状態のまま鉱物どうしが化学変化を起こし、変性することがある。こうして生じた岩石を変成岩と呼ぶ。高温のマグマと接触することで生じる変成作用を接触変成作用と呼び、泥岩や砂岩などの堆積岩から生じた、硬い緻密な岩石をホルンフェルスといい、石灰岩が変化した岩石を結晶質石灰岩(大理石)という。プレート境界などの変動帯にある岩石が長く置かれて起こる変成作用は広域変成作用と呼ばれ、うすくはがれる構造を持つ結晶片岩、縞状の片麻岩ができる。

地震災害と火山災害

 日本は古くから地震や火山、気象による災害を多く受けてきました。地震による被害には、揺れによる建物の倒壊、火災、液状化、津波、土砂災害などがあります。液状化現象は、河川沿いや埋立地など、地盤が砂地のところで、地震動によって砂の層が地下水とともに液体のようにふるまう現象です。津波は、海底が急激に変形することで生じる巨大な波のことで、海底から海面までのすべての海水が移動するため、非常に大きなエネルギーを持ちます。津波は一度引いてから押し寄せることがあったり、第2波、第3波の方が高くなったりすることもあるので注意が必要です。また、岬の先端やV字型の湾では波が集中して高くなることもあります。

火山が噴火をすると、さまざまな火山噴出物が生じます。火山弾や溶岩流は建物を破壊し、焼失させるなどの被害をもたらします。高温、高速の火砕流が斜面を下ると、人命に大きな被害が生じる場合があります。火山灰は農作物や私たちの健康に影響を与え、水を含むと泥流となります。火山ガスには人体に有毒な成分が含まれています。また、地下のマグマ活動が活発になると、火山性の地震や微動が発生し、火山体が崩壊して岩なだれが起こることがあります。さらに、流れ出した土砂が河川と一体になると土石流になったり、海に流入して津波が起こったりすることもあります。現在、地震であれば緊急地震速報によって直前の大きな揺れに備えることができます。火山であれば、噴火警報によって被害を防止することができます。しかし、日ごろの備えが大切であることに変わりはありません。ハザードマップを確認し、平常時から避難方法などを検討しておきましょう。