力のはたらき


力のはたらき


 次は力の性質について見ていこう。これも身近な存在であるが、音や光と比べて、力とは何かという疑問に答えにくい。そこではたらきに注目し、このようなはたらきをするものと考えてみよう。

 力のはたらき

  1. 物体を変形させる。
  2. 物体の運動の状態を変える。
  3. 物体を支える。

 

③の物体を支えるはたらきは、高校になったら②の物体の運動の状態を変えるはたらきに含めることになる。机や床がなかったら、その上に載っている物体は落下運動をすることになるが、机や床はその落下運動を変え続けていると考えるわけだ。

 

 力は向きを持つ量である。だから矢印で表現することができる。力を矢印で表すときのポイントは、始点と、向きと、長さに気を付けること。力がはたらく点を「力の作用点」という。また、力の矢印が乗っている直線を「力の作用線」という。

 

 力の作用点や向きや大きさが変わると力のはたらきも変化するので、これらを「力の三要素」と呼ぶ。向きと大きさは分かりやすいが、力の作用点は分かりにくいかもしれない。一例を挙げると、力の作用点が変わると、上図のように移動するか倒れるかが変わってくる。これを力のはたらきも違うと表現するわけだ。

 

いろいろな力


 では、力の例をいくつか紹介していこう。ひとつめは「重力」。重力は、地球が物体を引く力のことだ。図示するときは物体の中心から、鉛直下向きに矢印を書く。物体が静止していても、落下していても、上昇していても、斜めに運動していても、坂道をすべっていても鉛直下向きである。

 

 重力の大きさを「重さ」といい、N(ニュートン)という単位で表す。私たちが普段kgで表して体重と呼んでいるものは重さのことだから、物理の用語として使用する場合はNで表さなくてはならない。kgで表される物理量のことは「質量」という。0.1kgの物体の重さが約1Nである。質量と重さの間には比例関係があるので、0.2kgの物体の重さは約2Nであり、1kgの物体の重さは約10Nである。つまり、質量kgの数値を10倍すれば重力Nの数値になる。

 ただし、それは地球上での話で、宇宙空間や月面上だと話は変わる。月面上だと、同じ質量の物体でも重さは地球上の1/6になる。

 

 ふたつめは糸が物体を引く力で、これを「張力」という。図示するときは、糸と物体の接点が作用点なので、そこから糸に沿う向きに矢印を書けばよい。

 

 みっつめは接触面が垂直な向きに物体を押す力で、これを「垂直抗力」という。注意して欲しいのは、斜面や壁から受ける水力抗力の向きで、接触面と直交する向きにはたらく力なので、斜め向きや水平向きとなる。いつも鉛直上向きとは限らない。

 

 よっつめは接触面が面に沿う向きに物体を押す力で、これを「摩擦力」という。摩擦力には2種類あり、物体が静止しているときを「静止摩擦力」、物体が運動しているときを「動摩擦力」という。静止摩擦力の向きは、動こうとするのを妨げる向きであり、動摩擦力の向きは、運動を妨げる向きである。悩んだら、仮に摩擦が無かったらどちらに運動するかを考えるとよい。妨げるようにはたらくのだから、摩擦がない場合の運動と逆向きが摩擦力の向きだ。

 ちなみに、物理の用語として、摩擦力がはたらく面を「あらい面」、摩擦力を考えない面を「なめらかな面」と呼ぶことがある。

 

 5つめは、物体が元の形に戻ろうとしてはたらく力で、これを「弾性力」という。のびたばねは縮もうとして接続物体を引っ張り、縮んだばねは伸びようとして接続物体を押す。ばねの元の長さを「自然の長さ」または「自然長」と呼び、弾性力は、自然長からの変形量(のび・縮み)に比例して大きくなる。このきまりを「フックの法則」という。

 

 他には「静電気力」「磁気力」がある。これらは重力と同じく、はなれている物体の間にはたらくという特徴を持つ。これらを「遠隔力」という。物体にはたらく力を図示するときは、この遠隔力を忘れやすいので気を付けよう。

 

 遠隔力に対して、他の接触物体から受ける力を「近接力」という。近接力を図示する場合、その作用点は接点となる。他の物体と接していたら、その点から近接力を受けていると思ってよい。