静電気


 毛皮でこすられた琥珀は鳥の羽根などの軽い物体を引きつけるようになる。現在 静電気と呼ばれているこの現象は、紀元前600年頃までにはすでに知られていた。いまでは電気と言えば電流のことを指す場合の方が多いが、歴史的には静電気の時代が長いので、まずはこちらの話からしていこう。

静電気力


 静電気による力には、引き合う引力と反発し合う斥力の2種類があるということはかなり古くから知られていた。そこで、電気にはプラスの電気(正電荷)とマイナスの電気(負電荷)があると考えて、異符号の電荷どうはが引き合い、同符号の電荷は反発し合うと決められた。


 このような正負の電荷の間にはたらく力を静電気力という。静電気力F〔N〕の大きさについて詳しく調べてみると、

  1. 電荷の距離rの2乗に反比例して小さくなる。
  2. 電荷の持つ電気の量q1,q2に比例して大きくなる。

ということが分かった。このきまりをクーロンの法則という。また、電荷の持つ電気の量のことは電気量と呼ばれ、単位には〔C〕(クーロン)を使う。

万有引力の式と形が同じなので覚えやすいはずだ。

 

問題

 (ーa,0)の位置に+Q[C],(a,0)の位置にーQ[C]の電荷が置かれている。このとき、(0,a)の位置に置かれた+q[C]の電荷が受ける力Fを図示し、その大きさを求めよ。

解答

 位置(-a,0)に置かれた電荷と(0,a)に置かれた電荷の間にはたらく静電気力は斥力で、その大きさF1は、

である。また、位置(a,0)に置かれた電荷と(0,a)に置かれた電荷の間にはたらく静電気力は引力で、その大きさF2は、

である。ここで、F1とF2はベクトルだから、それぞれの合力Fはベクトルの和を考えなくてはならない。図を描いて計算すれば、

となる。

帯電


 物体や身体が電荷を持つようになることを「帯電する」という。帯電の仕組みを知るためには、原子の構造を理解する必要がある。原子は原子核とそれを取り巻く電子からできており、さらに原子核は陽子中性子からできている。

  • 電子……負の電気量を持つ。
  • 陽子……正の電気量を持つ。
  • 中性子…電気的に中性。

 このように電子や陽子は異なる符号の電気量を持っているのだが、これらは同じ大きさで、この電気量の大きさを電気素量という。電気素量はeという記号で表し、その大きさはおよそ

である。これよりも小さな電気量は存在しない。

 

 原子核に閉じ込められた陽子は簡単には取り出せないので、物質の帯電は電子の移動によって引き起こされる。他の物質から電子を受け取れば、その物質内の負電荷の割合が多くなり、「負に帯電した」という。また、他の物質へ電子を与えれば、その物質内の正電荷の割合が多くなり、「正に帯電した」という。

  • 負に帯電 ←電子を得る
  • 正に帯電 ←電子を失う

 また、たとえ物質と物質の間で電子のやり取りがあったとしても、全体の電気量は変化することはない。こきまりを電気量保存則という。

静電誘導


 鉄や銅などの金属が電流をよく通すのは、その内部を自由に動き回ることのできる電子を含んでいるからである。この電子を自由電子といい、金属のように電流をよく通す物体を導体という。


 正に帯電した物体を導体に近づけると、導体内部の自由電子はこの物体がある方へ移動して表面に負電荷が現れる。また、負に帯電した物体を導体に使づけると、自由電子はこの物体から遠ざかる方へ移動して、帯電体側には正電荷が現れる。このような現象を静電誘導という。


 電流を流しにくい物体を不導体(絶縁体)という。不導体に帯電した物体を近づけると、不導体を構成している原子の内部に電荷の偏りが現れるようになる。この現象は不導体の静電誘導であり、特に誘電分極と呼ばれる。詳しい話はまた後日

 

問題

 金属板に付いた箔を使用して電荷の有無を調べる器具を箔検電器という。正に帯電した導体棒を使って箔検電器を負に帯電させる方法を答えよ。

 

解答

 まず、正に帯電した導体棒を金属板に近づける。すると、金属板側には負電荷、箔側には正電荷が移動して箔が開く。箔が開くのは正電荷の間に斥力がはたらいているからである。

 続いて導体棒を金属板に近づけたまま金属板に触れる。すると、導体棒に引き寄せられている金属板上の負電荷は維持されたまま、箔側の正電荷が指の方へと逃げて箔が閉じる。

 箔が閉じたら、導体棒を維持したまま指を離し、

導体棒も遠ざけると、金属板に偏っていた負電荷が箔の方にも移動し、箔が開く。ただし、電荷の数が少ないため、はじめに導体棒を近づけたときの開き方よりも小さい。