磁場


 電気と磁石の間には似た点がたくさんある。静電気力や電場の復習をしながら磁石の性質について見ていこう。

磁気力


 まず、磁石にはN極とS極という磁極があり、異なる磁極のあいだには引力が、同じ磁極のあいだには斥力がはたらく。磁極の間にはたらくこの力を磁気力という。


 磁気力の大きさは、磁極の強さである磁気量qmに比例し、磁極のあいだの距離rの2乗に反比例する。磁気量の単位は〔Wb〕と表し、ウェーバと読む。

磁場


 磁気量qm〔Wb〕の磁極が磁気力を受ける空間を磁場という。このとき、磁極が受ける磁気力の大きさF〔N〕を、

と表したとき、H〔N/Wb〕を磁場の強さという。磁場の強さは、+1Wbの磁気量を持つ磁極が受ける力といえる。


 磁気量+Qm〔Wb〕, +qm〔Wb〕を持つ磁極の間にはたらく磁気力の大きさを考える。このとき、+Qmの磁極が作り出す磁場Hから+qmの磁極が力を受けているとすれば、

と計算することができる。


 また、+1Wbの磁極が受ける力の向きをたどっていくことで、磁場の向きを描くことができる。この矢印を磁力線という。磁力線のポイントは、

  • N極から出てS極へ入る。
  • 途中で途切れたり交わったりしない。

である。

 さらに、1m2を通過する磁力線の数がH本であると定義すれば、電気力線におけるガウスの法則と同様に、

という関係式を作り出すことができる。ここで、

とすると、この式は

となる。μ0は真空の透磁率と呼ばれる。また、ガウスの発散定理および磁荷密度ρm〔Wb/m3〕を使うと、この式は

だから、積分記号を外せば

となる。

磁位


 磁気力も静電気力と同様に保存力なので、磁気力による位置エネルギーU〔J〕を計算することができる。<基準点>を無限遠に取って計算すると、

となる。

 また、+1Wbの磁極が受ける力を磁場の強さHとしたのと同様に、+1Wbの磁極が持つ位置エネルギーを考えて、

これを磁位という。単位は〔A〕。+Qm〔Wb〕が磁極が作る磁場を考えて磁位φm〔A〕を求めれば、

となる。また、電場Eと電位φの関係と同様に、磁場の強さHと磁位φmのあいだにも、

という関係がある。