さあ、ようやく準備が整った。これから本格的に電気回路の問題に取り組もう。複雑な問題設定もあるけれど、あまり難しく考えないようにしよう。基本はどれも同じなのだ。
回路の問題を解く上で、きわめて重要な法則を紹介する。
この2つの内容をあわせてキルヒホッフの法則という。
第1法則を式に直すと、例えば左上の図の状況のときには、
という関係が成り立つ。これは簡単。
第2法則を式に直すのは少し慣れが必要だ。例えば右上のような回路を考えてみよう。ここで、ある1点Oを基準の電位(0V)として、右回りに回路をたどることを考える。すると、まず抵抗によって電位はRI〔V〕だけ下がり、電池によって電位がV〔V〕だけ上がって元の位置へと帰ってくる。これを、
と書くのだ。基本的には電流に沿って式を作るのが分かりやすいが、逆にたどっても大丈夫だということも知っておこう。O点から左回りに回路をたどってみると、まず電池によって電位がV〔V〕だけ下がり、続いて抵抗によって電位がRI〔V〕だけ上がって元の位置へと帰るので、
という式が成り立つ。右回りのときの式と比べてみよう。どちらも同じ意味だ。
問題
図のような回路を考えたとき、各抵抗を流れる電流の向きと大きさを答えよ。
解答
まずは電流の向きを仮定し、その値をI1, I2, I3とする。
すると、キルヒホッフの第1法則を利用して「電流の式」を作ることができる。
続いて、オームの法則「V=RI」を使って、各抵抗の前後の電位差V1, V2, V3を計算すると、
となるので、この結果を図へ書き入れる。
あとは、キルヒホッフの第2法則を使って「電位の式」を作る。まず、O→A→B→E→Oと回路をたどってみると、
という式を作ることができる。続いて、O→A→B→C→D→E→Oとたどってみると、
という式を作ることができる。これで「電流の式」と合わせて3種類の式が立てられたので、これらを連立させて解くことで、3つの未知数I1, I2, I3を求めることができる。計算すると、
となる。I1が負の数になったのは、はじめに仮定した電流の向きが逆だったからである。よって、
抵抗値の分からない抵抗Rxの値を求めたい。このとき、計測器具には内部抵抗があるので、正確に測るのはなかなか困難である。そこで、図のように既知の抵抗R1, R2をつなき、AB間に電流が流れないように検流計Gで確認をしながら、可変抵抗R3の値を調節するということを考える。これでRxが求められるのだ。この装置をホイートストンブリッジという。
どうしてこの装置でRxが求められるのかを確認しよう。AB間に電流が流れていないということは、A点とB点の電位が等しくなっているということである。また、A点とB点の電位が等しくなっているということは、OA間の電位差と、OB間の電位差が等しいということである。だから、OA間を流れる電流をIA、OB間を流れる電流をIBとすれば、
という関係式が成り立っている。また、AC間とBC間の電位差も等しいので、
という関係式も成り立っている。これらより、
という関係が成り立つ。図と比較がしやすいように、
と変形しても構わない。この関係式を使えば、確かにRxが求められる。
今度は電池の起電力(電圧)Exを求めよう。電池にも内部抵抗があるため、正確に求めることは難しい。
そこで次のような装置を考える。既知の電池EとE0、抵抗線、検流計を図のように接続し、検流計を流れる電流が0になるように調節する。このとき、抵抗線の長さl0の部分の電位差はE0と等しくなっている。抵抗線全体の抵抗をR、長さをl、流れている電流をIとすると、l0の部分の電位差E0は、
となる。
続いて、スイッチを起電力が未知の電池Exにつなぎかえて、検流計に電流が流れないように抵抗線の長さを調節する。このとき、抵抗線の長さlxの部分の電位差はExと等しくなっている。また、E0と同様に考えれば、
と計算できる。以上より、
という関係が導け、この関係を使うことでExの値を求めることができる。
この装置の利点は、電池Exに電流を流すことなく起電力を測定できるという点である。電流が流れないため、内部抵抗が測定に影響することがないのだ。