抵抗


 電流の流れにくさのことを電気抵抗(抵抗)R〔Ω〕という。また、抵抗を考える導体のことなども抵抗という。

抵抗率


 抵抗の意味を考えるときは、導体内部に敷き詰められた原子核のあいだを自由電子が通り抜けようとしている様子をイメージするといい。まるで、満員電車の内部を通過しようとしている状況だ。すると、

  • 長さが長いほど通過しにくい。
  • 断面積が大きいほど通過しやすい。

と考えられる。この関係をイメージできるかどうかが重要だ。ここで、もっと丁寧に調べてみると、抵抗R〔Ω〕は、

  • 長さl〔m〕に比例して大きくなる。
  • 断面積S〔m2〕に反比例して小さくなる。

という関係になっているので、この内容を式の形で表せば、

となる。ρ〔Ω・m〕は材質ごとの電流の流れにくさを表し、抵抗率という。


 また、抵抗は導体の温度が高いほど大きい。これは、温度が高いほど導体を構成している原子の熱運動が激しくなり、自由電子の通過を妨げるようになるからである。そこで、温度t〔℃〕が高いほど抵抗率ρ〔Ω・m〕が大きいと考えて、

と表現する。αは抵抗率の温度係数という。難しい式だけど、実はそんなに重要ではありません。

ジュール熱


 抵抗に電圧V〔V〕をかけて電流I〔A〕をt秒間流すと、Q〔J〕の熱が発生する。

 この熱をジュール熱といい、この関係をジュールの法則という。


 ジュール熱は電流が抵抗を流れたことによって生じるが、電流が流れるのは電池があるからである。そこで、電池した仕事W〔J〕が変換されてジュール熱Q〔J〕が発生すると考えられるので、

である。この電池がした仕事Wを電力量という。また、これは抵抗に対して電流がした仕事ということもできる。

 また、このときの仕事率P〔W〕は、仕事Wと仕事率Pの関係(P=W/t)より、

となる。この仕事率Pを電力という。

電流計と電圧計


 電池や抵抗をつなげてぐるりと一周させたものを電気回路という。また、回路を流れる電流I〔A〕を計る装置を電流計、回路上の2点間の電位差V〔V〕を計る装置のことを電圧計という。


 ところで、電流計や電圧計の内部にも抵抗がある。抵抗があるということは、そこからジュール熱が発生するということで、必ず回路全体の消費電力に影響を与えてしまう。とはいえ、この影響をなるべく小さくするためにはどのような抵抗を考えればよいのだろうか。

 電流計の内部抵抗をr(A)〔Ω〕とする。このとき、この電流計を流れる電流をI〔A〕として電流計で消費される電力P(A)〔W〕を計算すると、

となる。つまり、r(A)〔Ω〕の値が小さければ小さいほど電流計での消費電力P(A)は小さくなり、回路全体への影響も小さくなるということ。だから、

  • 電流計の内部抵抗はなるべく小さい方がいい。


 では、電圧計の内部抵抗rV〔Ω〕について考えてみよう。電圧計の前後における電位差をV〔V〕として、電圧計で消費される電力P(V)〔W〕を計算すると、

となる。つまり、r(V)〔Ω〕の値が大きければ大きいほど電圧計での消費電力P(V)は小さくなり、回路全体の影響も小さくなるということ。だから、

  • 電圧計の内部抵抗はなるべく大きい方がいい。


 また、電流計や電圧計には、それぞれ測定できる電流や電圧の限界がある。測定したい電流や電圧が、その限界値を超えている場合にどのような工夫ができるのかを考えてみよう。

 例えば、測定できる電流の限界値I(A)のn倍の電流を測定したいとしよう。こんなときは、図のように電流の通り道を増やしてやればいい。このような装置を分流器という。

 具体的に、どのような抵抗r'〔Ω〕を接続すればよいか計算してみよう。まず、この新しい通り道を流れる電流をI'〔A〕とすると、もともとの電流がnI(A)で、これがI(A)とI'に分かれていることから、

という「電流の関係式」が分かる。また、抵抗r'の前後と電流計の前後の電圧は等しいはずだから、

という「電圧の関係式」が分かる。これらより、r'〔Ω〕を求めると、

となる。


 次は、電圧計の測定限界がV〔V〕であるとき、そのn倍の電圧を測定することを考えてみよう。この場合は、電圧計の前後で電圧を下げてしまえばいい。このような装置を倍率器という。

 このとき接続した抵抗r'〔Ω〕を求めてみよう。抵抗r'の前後の電位差をV'〔V〕とすれば、この抵抗と電圧計を通過する電流は等しいから、

という「電流の関係式」ができる。また、元の回路に含まれる抵抗の前後の電位差nV〔V〕は、抵抗r'と電圧計の前後の電位差の和と等しいから、

という「電圧の関係式」もできる。これらの式よりr'〔Ω〕を求めると、

となる。