電磁誘導


電磁誘導


 磁界の中でコイルに電流を流すとコイルが回転する。逆に、磁界の中でコイルを回転させると電流が流れる。コイルの近くで磁石を回転させてもいい。このようにして電気を取り出す装置を、「発電機」と呼ぶ。今回は、現代の暮らしに欠かすことのできない発電機の仕組みを詳しく見ていこう。

 

 コイルに磁石を近づけたり遠ざけたりすると、電流が流れる。この現象を「電磁誘導」と呼び、電磁誘導によって流れる電流を「誘導電流」と呼ぶ。電磁誘導での最大のポイントは、磁石を近づけるときと遠ざけるときとで誘導電流の向きが逆向きになるという点だ。N極を近づけるときとN極を遠ざけるときとで誘導電流は逆向きになり、S極を近づけるときとS極を遠ざけるときとで誘導電流は逆向きになる。

 

 図のGは「検流計」を表していて、検流計は精密な電流計のことだ。検流計は微弱な電流でも測定することができ、向きの検出にも利用できる。始めは針が中央にあり、+端子側から電流が流れ込むと右向きに針が振れ、-端子側から電流が流れ込むと左向きに針が振れる。

 

 誘導電流が逆向きになる例はもうひとつある。それは、磁石の磁極を逆向きにしたときだ。N極を近づけるときとS極を近づけるときとで誘導電流は逆向きになる。また、N極を遠ざけるときとS極を遠ざけるときでも誘導電流は逆向きになる。

 

〇 誘導電流を逆向きにする方法

  • 磁石を動かす向きを逆にする。
  • 磁石のN極とS極を入れ替える。

N極とS極を入れ替え、さらに磁石を動かす向きを逆にすると、誘導電流の向きは変わらないので気を付けよう。

 

 また、電磁誘導は磁石をコイルに「近づけたり・遠ざけたり」することで生じる現象である。コイルの近くに磁石があるだけでは誘導電流は流れない。このことを踏まえると、磁石をゆっくり動かす場合と素早く動かす場合で、素早く動かす方が大きな誘導電流が流れることが分かると思う。誘導電流を大きくする方法には点ある。覚えておこう。

 

〇 誘導電流を大きくする方法

  • 磁石を速く動かす。
  • 磁力の強い磁石に変える。
  • コイルの巻き数を増やす。

発電機


 2つのコイルの中央で磁石を回転させることを考えよう。図の瞬間、左のコイルにはN極が右側から近づいている。右のコイルにはS極が左から近づいている。すると、左右のコイルには同じ向きの誘導電流が生じることになる。磁石は回転しているだけなのでなくなることはなく、コイルには継続的に電流が流れ続けることになる。このように、電磁誘導を利用して継続的に電流を取り出す装置を「発電機」という。

 

 上の状況から少しだけ回転が進むと、左のコイルからN極が遠ざかり、右のコイルからはS極が遠ざかる。このとき、左右のコイルには上の図と逆向きの誘導電流がそれぞれ生じることになる。磁石がコイルの間でくるくる回ると、周期的に向きが入れ替わるような電流が流れるのだ。

 

 この発電機によって取り出した電流のように、周期的に向きと大きさが変わる電流を「交流」という。交流に対して、乾電池を抵抗に接続したときに流れる電流のような、向きと大きさが一定の電流を「直流」という。発電所で作られて学校や家庭に届けられている電気は交流で、交流は電圧を変えやすいなどのメリットがある。

 1秒間に交流の向きが何回同じ向きになるかを表す量を「周波数」と呼び、Hz(ヘルツ)という単位を付けて表す。学校や家庭に送られている交流の周波数は東日本と西日本で異なっていて、東日本では50Hz,西日本では60Hzになっている。

 

 直流電源と交流電源を接続したときに異なるふるまいをする電子部品を紹介しよう。「発光ダイオード」は、一方の向きにしか電流を流さず、電池の向きを逆向きに接続すると光らない。この特徴を「整流作用」と呼ぶ。

 

 整流作用をもつ発光ダイオードを交流電源につなぐと、周期的に流れる電流の向きが変わろうとする。しかし、発光ダイオードの整流作用のために一方の向きにしか電流が流れない。そのため、発光ダイオードは点滅する。