磁石にはN極とS極がある。これらをまとめて「磁極」と呼ぶ。静電気と同様に、同種の磁極は反発しあい、異種の磁極は引き合う。この力を「磁力(磁気力)」という。このような力がはたらくことは経験上知っているはずだ。今日は、磁石の性質について理解を深めていこう。
方位磁針のN極は常に北を向く。これはなぜかというと、地球が大きな磁石になっているからだ。ただし、方位磁針のN極が北に引き寄せられないといけないから、地球の北はS極になっている。
地球の周囲のように磁石が磁力を受ける空間を「磁界(磁場)」という。棒磁石のまわりで、方位磁針のN極が指す向きに沿って矢印を引くと上のようになるので、これを「磁界の向き」としよう。この磁界の向きを表す矢印を「磁力線」と呼ぶ。磁力線の特徴は以下の通り。
磁力線の間隔が狭いのは磁極のすぐ近くであり、大きな磁力が生じるので、この場所を「磁界が強い」と表現している。
また、同じ種類の磁極を近づけた場合、その周囲の次回は図のようになる。反発している様子が思い浮かぶだろうか。
実は、磁石がなくても磁界はできる。まっすぐに伸びた導線に電流を流すと、図のような「同心円状の磁界」ができるのだ。向きも大切なので覚えよう。電流の向きに進んだ右ねじが回転する向きに磁界ができる。これを「右ねじの法則」と呼ぶ。また、磁界は導線に近いほど強く、離れるにしたがって弱くなる。そのほかのポイントは以下の通り。
続いて、円形の導線(コイル)に電流を流した場合を考えよう。直線電流が作る磁界を思い出すと、導線の細かい部分が作る磁界が書ける。それを組み合わせて考えると、コイルの内側と外側で磁界の向きが逆になっていることが分かるだろう。内側にできる磁界の向きは、電流の向きに回した右ねじが進む向きと同じである。これも「右ねじの法則」と呼ぶ。電流の向きを逆にすると、磁界の向きも逆向きになる。
コイルが作る磁界の向きのきまりは、10回、20回…と巻いたコイルでももちろん同じである。コイルの外側にできる磁界に注目すると、棒磁石の周囲の磁界とよく似ている。つまり、電流が流れたコイルは磁石になったといえる。これを「電磁石」という。コイルのどちらがN極・S極になっているのかは、棒磁石と磁界を比べて判断しよう。
電磁石の磁界を強くする方法は3つあるのでまとめておこう。
鉄しんを入れることで、磁界は数百から数千倍強くなる。
U字磁石の間に導線を通し、電流を流すと、導線は磁界から力を受けて動く。この力の性質をまとめると、
中学理科の範囲ではないが、電流と磁界と力の向きは「フレミング左手の法則」で説明できる。中指が電流、人差し指が磁界、親指が力の向きである。
ではモーターの仕組みを考えてみよう。モーターは、固定された磁石の内側のコイルがあり、コイルに電流が流れると、コイルが回転するという仕組みである。図のようなコイルを考えると、コイルの右側と左側で受ける力の向きが逆なので、コイルは回転する。
ところが、コイルに流れる電流の向きは一定のため、180°回転したところで逆向きの力がかかる。その結果、逆回転しようとする。つまり、このままだと回転し続けることができない。
実際には、整流子というものがあり、電流の向きを180°ごとに切り替えている。
整流子のおかげで、コイルの辺ABに流れる電流が、180°ごとに逆向きになっている。その結果、コイルは一定の向きに回転し続けられるのだ。