科学技術と人間生活


放射線


 電気エネルギーは様々なエネルギーの形に変換が可能である。このように、変換がしやすく、さらに輸送が簡単であるということから、電気エネルギーは広く利用されている。電気に限定しなくとも、科学の発展によって人間生活はどんどん豊かになってきた。今回は、具体例を交えて科学技術と人間生活の関係を見ていこう。

 

 原子力発電所のデメリットとして、事故による影響が大きいことが挙げられる。事故によって放射性物質が外部に出てしまうと、そこから「放射線」という大きなエネルギーを持った粒子や電磁波が放出されるのだ。粒子の仲間にはアルファ線、ベータ線、中性子線、電磁波の仲間にはガンマ線やX線がある。そして、これらには

  • 物質を透過する
  • 物質を電離する(電子を奪ってイオンにする)

という共通した性質がある。電離作用によって原子の性質が変化すると、その影響が分子、細胞、組織、器官に影響が出る。そのため、放射線はなるべく浴びない方がよいと言われている。しかし、放射線は宇宙からもやってきているし、岩石や食物からも出ているので、完全に遮断することは難しいこれらを「自然放射線」という。また、放射線は医療や農業に利用されてもいるので、必要以上に恐れず、正しい知識を持って接することが大切である。

 

素材と科学技術


 衣服は綿や絹だけでなく、今ではナイロンやポリエステルなどの合成繊維で作られていることが多い。合成繊維は石油から作られる。衣服だけでなくプラスチックも石油から作られるので、火力発電所の燃料として利用するだけでなく、素材の原料としても石油はなくてはならないものになっている。ただし、化石燃料は消費すればやがてなくなってしまうし、プラスチックがごみになった場合分解されないという問題がある。だから、化石燃料の消費をなるべく抑えるために、リサイクルやリユース、リデュースを心がけたり、生物分解プラスチックの利用をしたりといった工夫が今後大切になっていくだろう。

 

照明と科学技術


 次は、照明の移り変わりを見ていこう。白熱電球が発明されると、それまでに使用されていたロウソクと比較して格段に明るい光を手に入れることができた。しかし、白熱電球は電気エネルギーの10%程度しか光エネルギーとして使用することができない。そこで、現在では変換効率の良い蛍光灯や発光ダイオード(LED)が発明されて使用されるようになってきている。このように、科学技術は私たちの生活を便利にするとともに、環境に配慮するために使われてもいるのだ。

 

交通と科学技術


 産業革命の際に蒸気機関車が発明され、速く、大量の人や荷物を運べるようになった。交通手段も科学技術によって大きく発展した分野で、電車や自動車、飛行機によってより速く、より多くの人や荷物が運べるようになってきている。問題点としては、やはり石油などの燃料を消費するという点がある。

 

通信と科学技術


 江戸時代までは遠くの人と情報をやりとりするためには、飛脚に手紙を運んでもらうなどしかなかった。明治時代に入り電話が発明されると、音声によって遠くの人と情報をやり取りすることができるようになった。今ではインターネットを利用して瞬時に世界中の人と情報をやり取りできる。ところが、速く、多くの人と情報をやり取りできるようになったということは、必要な情報だけでなく、正しくない情報を目にする機会が増えたということでもある。こういった情報との付き合い方が問題となっている。

 

農業と科学技術


 農業も科学技術によって移り変わってきた。化学肥料の発明によって農作物をたくさん収穫できるようになり、世界的な人口増加に対応できたという歴史がある。また、品種改良を行って様々な品種が作られてきたが、現在ではゲノム編集という技術が使用されてきている。今後はバイオテクノロジー分野が大きく発展することが期待される。

 

科学技術とこれから


 バイオテクノロジーだけでなく、今後は宇宙開発や深海探査の技術が大きく発展すると考えられている。また、素材や照明の部分で例を出したように、私たちの生活を豊かにすることに科学技術が使用されるだけでなく、環境を保全することにも科学技術が使用されてくるだろうと考えられる。これからの私たちの生活はどうなっていくのだろうか。