力学的エネルギー


位置エネルギー


 動いている物体は他の物体と衝突して相手の物体を移動させることができる。高い位置にある物体は、落下して速さを持つようになり、衝突して相手の物体を移動させることができるようになる。つまり、動いている物体や高い位置にある物体には、仕事をする能力があるのだ。

 

 物体が持つ仕事をする能力を「エネルギー」と呼ぶ。そして、運動している物体が持つエネルギーを「運動エネルギー」、高い位置にある物体が持つエネルギーを「位置エネルギー」と呼ぶ。

 では、位置エネルギーと仕事の関係を見ていこう。高い位置から小球をレールに沿って落下させ、レールの下にある木片と衝突させる。こうしてはじめの小球の高さと木片の移動距離を比べることで、高さと仕事の関係が分かる。

 


 小球の高さを変えながら木片の移動距離を調べていくと、これらの間には比例の関係があることが分かる。また、小球の質量を変えて実験すると、小球の質量と木片の移動距離の間にも比例関係があることが分かる。つまり、

  • 小球の持つ位置エネルギーは、小球の質量と高さにそれぞれ比例する量である。

 

運動エネルギー


 続いて、木片の直前に簡易速度計を置いて同じ実験をしてみよう。簡易速度計の内側には2つセンサーが付いていて、通過する時刻の差から速さを計算している。これで速さと運動エネルギーの関係が分かる。

 

 すると、比例関係ではないが、小球の速さが大きいほど木片の移動距離が長くなることが分かる。高校の範囲にはなるが、速さの2乗と木片の移動距離が比例関係にあることが知られている。ところで、位置エネルギーの実験から小球の質量と木片の移動距離が比例関係にあることが分かったが、これは速さが同じでも質量が大きくなれば木片の移動距離が大きくなることを示している。すなわち、

  • 小球持つ運動エネルギーは、小球の質量に比例し、速さの2乗に比例して大きくなる量である。

 

力学的エネルギー保存の法則


 高い位置からレールに沿って小球を落とすと、徐々に位置が低くなり、それと同時に速さが徐々に大きくなる。これはつまり、位置エネルギーが徐々に小さくなり、それと同時に運動エネルギーが徐々に大きくなることを表している。その後、高くなるようにレールを敷いておくと、徐々に速さが小さくなると同時に徐々に位置が高くなっていく。これは、運動エネルギーが徐々に小さくなると同時に位置エネルギーが徐々に大きくなっていくことを表している。

 このように、運動エネルギーと位置エネルギーは、一方が小さくなると他方が大きくなり、一方が大きくなると他方が小さくなるわけだが、実は運動エネルギーと位置エネルギーの和は変わっていない。運動エネルギーと位置エネルギーの和を「力学的エネルギー」と呼び、摩擦や空気抵抗がないときは力学的エネルギーがずっと一定に保たれるのだ。これを、「力学的エネルギー保存の法則」と呼ぶ。

 

 力学的エネルギー保存の法則は、レールの上を移動するジェットコースターのような運動の他に、振り子の運動でも成立する。よく登場するのがこの2種類なので、覚えておくとよいだろう。