力がはたらく運動


運動の表し方


 前回はいくつかの力がはたらいて物体が静止している状況を考えた。今回はそれらの力がつり合っていない状況を考え、物体がどのような運動を行うかを見ていこう。

 

 

 物体の運動を表すには、速さと向きを指定してやればよい。この2点によって運動の様子を区別することができる。速さは

という式で求められる。例えば50メートルの距離を10秒間で走ったとき、50〔m〕÷10〔秒〕=5〔m/s〕となる。速さの単位を表す記号〔m/s〕は「メートル毎秒」と読む。5m/sというのは、1秒間あたり5m進む速さということだ。

 

 ちなみに速さには2種類ある。50メートルを10秒間で走ったときの5m/sという速さは、10秒間の「平均の速さ」である。平均の速さは各時刻の速さを表しているとは限らない。各時刻における速さのことは「瞬間の速さ」と呼ばれる。自動車のスピードメーターが表示する速さは瞬間の速さと考えてよい。

 

 

記録タイマーによる速さの測定


 物体の速さを測定する方法に、記録タイマーと紙テープを使う方法がある。記録タイマーは一定時間ごとに紙テープに点を打っていく装置である。打点の数はコンセントから得られる交流の周波数と一致していて、東日本では1秒間に50回、西日本では1秒間に60回である。この装置を使って、斜面をすべり下りる台車の速さを測定してみよう。

 

 記録を見ると、点の間隔が徐々に広がっていることが分かる。理由は、台車が徐々に速くなっているからだ。では、この記録から台車の運動の様子を求めてみよう。1秒間に50打点が押されているとすると、0.1秒間で5打点されているはずだから、5打点ずつの長さを測り、0.1秒間ごとの平均の速さを計算していく。始めいくつかの点は重なってしまっているので、はっきり読み取れる点から順番に5打点ずつの長さを測るようにしよう。

 

 横軸に時間、縦軸に0.1秒ごとの平均の速さを表したグラフは上図のようになる。一定の間隔で速さが大きくなっていることがわかる。つまり、同じペースで速くなっているということだ。

 

 一定間隔で速くなっているので、平均の速さを、各期間の真ん中の時刻における瞬間の速さと仮定し、点を打ってそれぞれの点を結ぶ。すると、図のような直線が現れる。始めの時刻で速さが0にならないのは、記録が重なった部分を解析に利用していないからである。

 

力と運動の関係


 紙テープを5打点ずつ切って並べて貼っても同じ形のグラフができる。また、斜面の角度を大きくすると0.1秒ごとの平均の速さの差が大きくなる。斜面の角度を小さくすると、平均の速さの差が小さくなる。

 

 斜面の角度を大きくすると、重力の斜面方向の成分が大きくなる。この成分が大きければ大きいほど、速さの増え方が大きくなっていくと予想できる。

 


 それから、斜面に沿って上向きに動くように初めの速さを与えると、斜面上向きに台車が進む。このときの重力の斜面宝庫の成分の大きさは、運動の向きと逆向きである。そして、平均の速さは同じ割合で小さくなっていく。つまり、運動と逆向きの力を受けて運動する場合、徐々に同じ割合で減速していくということだ。

  • 運動と同じ向きに力がはたらくと、徐々に速くなっていく。
  • 運動と逆向きに力がはたらくと、徐々に遅くなっていく。
  • 力が大きいほど、速さの変化の割合が大きい。