力がはたらかない運動


等速直線運動


 運動と同じ向きに力がはたらいているとき、徐々に速さが大きくなっていく。運動と逆向きの力がはたらいているときは、徐々に速さが小さくなっていく。では、運動と同じ向きや逆向きの力がはたらいていない場合はどのような運動をおこなうのだろうか。

 

 記録タイマーによって打点された紙テープを見ると、等間隔で点が並んでいることが分かる。つまり、一定の速さで進み続けていることになる。このような、一定の速さで一直線上を進む運動を「等速直線運動」と呼ぶ。

 

 1秒間に60回打点される記録タイマーの場合、6打点ごとの紙テープの長さが0.1秒間に進んだ距離になっている。ここから0.1秒間ごとの平均の速さが求められるので、こうして求めた速さを縦軸に、時間を横軸に取ったグラフを書くと上のようになる。横軸に平行なグラフになっていることに注目しよう。速さが一定で変化しないことを表している。

 

 では、縦軸に移動距離を取ったグラフを書いてみよう。0.1秒間で4cm進む運動の場合、0.2秒間で8cm,0.3秒間で12cm進んでいくので、上図のようになる。原点を通る直線であることから、移動距離と時間が比例関係にあることが分かる。ところで、比例のグラフは一般的に「y=ax」のように表すことができる。yが縦軸の量、xが横軸の量、aはグラフの傾きだ。上図のグラフでは縦軸yが「移動距離」、横軸xが「時間」、傾きaは計算すると40cm/sとなり、「速さ」になっていることが分かる。この3種類の量の関係は、「y=ax」と比較することで

という関係を導くことができる。「速さ=移動距離/時間」という式を変形しただけではあるが、上の式は

等速直線運動にしか使えない

ので注意しよう。前回紹介した運動のように、徐々に速さが大きくなる運動や小さくなる運動では、一定時間ごとの移動距離が変化してしまうので、移動距離が上の式で表せないのだ。

慣性の法則


 台車が水平面を等速直線運動しているとき、台車には運動方向に力がはたらいていない。また、摩擦力がはたらく面上の物体に力を加えたときも物体は等速直線運動をする。このとき、加えた力と摩擦力は同じ大きさである。つまり、物体に力がはたらかない、またははたらいていてもその力がつり合っている場合、運動している物体は等速直線運動をし続けるのだ。

 ところで、物体に力がはたらいていない、またははたらいていてもその力がつり合っている場合、静止している物体は静止をし続けることは以前に紹介した。つまり、

  • 物体に力がはたらいていない、またははたらいていてもその力がつり合っている場合、静止している物体は静止をし続け、運動している物体は等速直線運動をし続ける。

これを、「慣性の法則」と呼ぶ。

 

 「慣性」とは、物体がいまの運動をし続けようとする性質のことで、物体にそのような性質があることを慣性の法則と呼ぶわけだ。だるま落としやテーブルクロス引きが成り立つのは、慣性によるものである。また、止まっている電車が動き出すときに身体が後ろに倒れそうになったり、電車が止まるときに身体が前に倒れそうになるのも、慣性によるものである。

 

作用反作用の法則


 最後に、力のつり合いと似た力の関係があるので紹介しておく。例えば、「人が綱を引く力(FA)」がはたらいているとき、必ず同時に「綱が人を引く力(FB)」がはたらいているというものだ。

 

 人が【綱を】引く力は綱にはたらく力であり、綱が【人を】引く力は人にはたらく力なので、この2つの力は異なるものにはたらく2力であることに注意しておこう。また、この2力を説明した分をよく見ると、【人】と【綱】が入れ替わっている。このような力のペアのことを、「作用・反作用」と呼ぶ。一方の力が作用で、もう一方の力が反作用なわけだが、あらかじめ決まっているわけではない。分かりやすく言えば、押したら押し返される、引いたら引き返されるという2力のことを作用・反作用と呼ぶのだ。作用には必ず反作用があるというきまりを、「作用反作用の法則」という。作用と反作用の間には、次のような関係がある。

  • 同じ作用線上
  • 逆向き
  • 同じ大きさ

これは、力のつり合いの2力と同じ条件だが、力のつり合いの2力が「同じ物体にはたらく2力」であるのに対し、作用と反作用は「異なる物体にはたらく2力」であることに気を付けよう。