磁場の中でコイルを回転させると、向きや大きさが周期的に変化する電圧や電流が発生する。このような電流や電圧を交流電流、交流電圧という。
回路を流れる電圧Vが図のように変化して、
と表されるとき、V0を交流電圧の最大値、ωを角周波数という。また、
と計算されるf〔Hz〕を周波数という。西日本は60Hz, 東日本は50Hzの周波数の交流である。
また、交流電源と抵抗をつなげた回路には、図のような交流電流が流れる。このとき、電流の時間変化は
と表される。このとき、I0を交流電流の最大値という。
直流のとき、電力は「P=VI」と書けたから、これを交流にも当てはめると、
となる。これをグラフにすると上のようになる。VやIとは違い、負の値を持たないことが分かる。また、電力の平均値は
である。ここで、
とおくと、
となる。Veを交流電圧の実効値、Ieを交流電流の実効値という。家庭に届けられる100Vや200Vの電圧とは、実効値のことを指している。
実効値のあいだには直列回路におけるオームの法則と同様の法則が成り立つ。
コイルに電池をつないで、スイッチを開けたり閉じたりすると、コイル内の磁場が変化して誘導起電力が発生する。この現象を自己誘導という。
誘導起電力Vは、コイルの巻き数をNとすると、
である。
ここで、磁束の変化ΔΦは「Φ=BS」より
であり、「B=μH」と「H=nI」の関係を使うと、
とさらに変形できる。よって、
となる。lはコイルの長さ。ここで、
とすると、
になる。L〔H〕(ヘンリー)を自己インダクタンスといい、自己誘導のしやすさを表す。
次は、コイルに電流Iが流れているときにコイルが蓄えているエネルギーUを求めてみよう。コイルに流れる電流が、時間dtのあいだにdIだけ増えると、コイルに生じる誘導起電力の大きさVは、
と表すことができる。このとき、この電位差を作り出すために電池がコイルに対してした仕事dWは、「W=VIt」より、
となるから、コイルに流れる電流が0~Iになるまで足し合わせると、電流がした仕事Wを求めることができる。
よって、コイルが蓄えているエネルギーUは、
だと分かる。
スイッチを閉じたり開いたりすると左側の1次コイル内の磁場が変化し、右側の2次コイル内の磁束を変化させる。すると、その変化を打ち消そうとして2次コイル内に磁場が発生し、誘導電流が流れることになる。この現象を相互誘導という。
このとき発生する2次コイルに生じる誘導起電力V2は、
であり、
だから、
と計算できる。ここで、
とすると、
となる。M〔H〕を相互インダクタンスといい、相互誘導のしやすさを表す。
相互誘導を利用して交流の電圧を変える装置を変圧器という。交流電源につながれた1次コイルに生じる誘導起電力V1の大きさは、
であり、2次コイルに生じる誘導起電力V2の大きさは、
である。これらより、誘導起電力V1,V2とコイルの巻き数N1,N2のあいだには、
の関係があることがわかる。V1とV2の比は、実効値の比とも等しいので、
も成り立つ。電圧の比とコイルの巻き数の比が等しいということを表している。
また、変圧器の前後でエネルギー損失がないとすれば、両側の電力P(=VI)が等しくなるから、
という関係が成り立つ。