電気エネルギー


電力


 生活の身近なところで電気はたくさん使用されている。蛍光灯やLEDなどの照明器具では電気エネルギーを光のエネルギーとして利用しているし、ポットやドライヤーなどでは熱エネルギーに変えて利用している。他には、ラジオや音楽プレイヤーでは音のエネルギーに利用されている。

 

 

 電気エネルギーの大きさを表す目安に「電力」がある。電子レンジに「500W」や「600W」と書いてあるのを見たことがあると思う。この単位(W)は「ワット」と読む。

 電子レンジ以外の電気器具にも電力の値が書いてある。例えば、「100V-1000W」とポットに書いてあったとしよう。これは100Vの電圧で使用したとき、1000Wの電力を消費することを表している。ちなみに、1000Wを1キロワット(kW)と呼ぶこともある。また、このときポットには10Aの電流が流れている。つまり、

という関係がある。他の例を挙げれば、

  • 「100V-600W」の掃除機…6A
  • 「100V-1200W」のドライヤー…12A

となる。一般的に、電気エネルギーを熱エネルギーとして利用する電気器具の消費電力は大きい。

 

 では、このような問題を考えてみよう。「100V-50W」表記の電球と「100V-100W」表記の電球を100Vの電源につなぐ。このとき、どちらの電球の方が明るく光るだろうか。

 並列回路だからどちらの電球にも100Vの電圧がかかっている。このことから、どちらの電球の消費電力も表示通りであることがわかる。だから、電力の大きな「100V-100W」の電球の方が明るく光る。

 

 このとき50Wの電球に流れている電流は、電力の定義から0.5Aだと分かる。また、100Wの電球に流れている電流は1Aだと分かる。よって、オームの法則から、それぞれの電球の抵抗が200Ω,100Ωだと分かる。

 

 同じ2種類の電球を今度は100Vの電源に直列に接続しよう。このとき、どっちの電球の方が明るく光るだろうか。

 

 

 さきほど抵抗を求めたので、この回路全体の抵抗は、200+100=300Ωだと分かる。電源の電圧が100Vだから、オームの法則から、回路を流れる電流が1/3Aということになる。すると、それぞれの抵抗に加わる電圧も、オームの法則から67V, 33Vだと求められる。よって電力の定義から、電圧が大きいほど消費電力が大きいので、「100-50W」の電球の方が明るく光ることが分かる。

 

 

電力量


 電力は電気エネルギーの大きさの目安ではあるが、電気器具を長時間使用すれば、当然消費する電気エネルギーも大きくなる。そこで、「電力×時間」という量を考えることにしよう。これを「電力量」といい、ジュール(J)という単位を使って表す。このとき、時間の単位は秒(s)である。

 電力量は、使用した電気エネルギーの総量である。このことから、電力は1秒間あたりの電気エネルギー(電力量)であるともいえる。

 また、電力量の単位にはワット時(Wh)も使われる。Whの計算は、単位で考えれば「ワット(W)×時間(h)」で計算される量である。

1時間(h)は3600秒(s)だから、1Whは3600Jである。 

また、1kWhは1Whの1000倍だから、

である。

 電気エネルギーのすべてが熱エネルギーに変わったとすると、そのときの熱の量は、電気量と同じ計算で求めることができる。これを「熱量」という。熱量の単位は電気量と同じくジュール(J)である。

熱量の単位には、ジュール(J)のほかにカロリー(cal)を使うこともある。1calは、1gの水の温度を1℃上げるのに必要な熱量のことで、約4.2Jである。

 

 

熱量


 電熱線を水に浸して電圧をかけると、電流が流れて熱が発生する。このとき、電流を流す時間と水の上昇温度の間には比例関係がある。

 

 抵抗に加える電圧を変えると、流れる電流も変わる。そして、水の上昇温度は電圧と電流の積、つまり電力に比例する。電圧や電流ではなく、電力に比例することに気を付けよう。

 

 異なる電熱線に同じ電圧を加えたとき、図のように2種類の直線が得られたとする。このとき、抵抗が大きな電熱線はどちらだろうか。傾きが大きな電熱線は温度上昇が大きいことから、多くの熱が発生したことが分かる。熱量が大きいということは電力が大きいということであり、電力が大きいということは大きな電流が流れているということでもある。大きな電流が流れたということは、抵抗が小さいということだ。このことから、抵抗の大きな電熱線は、傾きが小さいグラフの方であることが分かる。