地球の変遷


地球の形成

 宇宙が誕生したから約92億年後、今から約46億年前、星間ガスの濃い部分が集まって収縮するようになり、やがて光り始めた。原始太陽の誕生である。原始太陽が成長していく過程で、周囲のガスの塊が回転しながら扁平になっていった。これを原始太陽系星雲と呼ぶ。その後、原始太陽系星雲の中で塵が衝突、合体を繰り返し、直径10km程度の微惑星がたくさん誕生した。微惑星はさらに衝突と合体を繰り返し、太陽に近い場所では主に岩石と金属からなる微惑星が衝突することで、地球型惑星の原始惑星となった。太陽から遠い場所では、主に岩石と氷からなる原始惑星が誕生し、この原始惑星が周囲の水素やヘリウムを引き付けることで、木星型惑星が誕生した。

 現在の月程度の大きさに成長した地球は、その重力で二酸化炭素や水蒸気をとどめておけるようになり、これが原始大気となった。火星ほどの大きさになると、大気による温室効果と衝突による熱エネルギーによって表面温度が上がり、表層の岩石が溶け始めた。これをマグマオーシャンと呼ぶ。マグマオーシャンの中で重たい金属が沈んで、地球の中心に金属の核が形成された。現在の大きさになるころには、地表は冷えて固体の岩石で覆われた地球になった。すると、地表に到達する前に蒸発していた雨が地表に到達するようになり、原始海洋が誕生した。原始海洋の中で、やがて生命が誕生する。地球は太陽からの距離が1.5億kmの距離で、液体の水が存在できる温度である。また、地球は大気と海洋を引き付けておくのに十分な重力と大きさを持っている。さらに、大気の温室効果によって、平均気温が約14℃に保たれている。加えて、大気中の酸素によって生じたオゾン層が宇宙からの紫外線を吸収することで、地上の生物が保護されている。

古生物の変遷

 約40億年前に地球上で最初の生命が誕生した。深海の熱水噴出孔で誕生したと推測されている。生命の痕跡の化石が38億年前の地層から発見されている。最古の生物の化石は35億年前のもので、原核生物である。27億年前にはシアノバクテリアが誕生して光合成が開始された。19年前には真核生物が誕生し、6億年前に多細胞生物が誕生した。このころの生物をエディアから生物群と呼び、硬い殻や歯をまだ持っていなかった。しかし、5億4100年前には三葉虫やアノマロカリスのように硬い骨格を持った動物が出現する。これらはチェンジャン動物群やバージェス動物群と呼ばれる。無顎類と呼ばれる脊椎動物も誕生した。その後、クサリサンゴなどのサンゴ類や筆石が繁栄した。上空にオゾン層が作られると、クックソニアなどの植物が陸上に表れ始めた。4億年前の水中には魚類が繁栄し、昆虫や両生類、裸子植物が誕生した。陸上では巨大なシダ植物の森が繁栄する。超大陸パンゲアが形成される頃には、陸上では爬虫類や単弓類、海中ではフズリナなどが繁栄した。このころの爬虫類がやがて恐竜や鳥類となり、単弓類は哺乳類に進化する。恐竜が誕生したころの海中では、モノチスなどの二枚貝が繁栄していた。恐竜の巨大化が進むころ、始祖鳥や鳥類が誕生し、被子植物が誕生した。このころの海中では、イノセラムス、トリゴニアなどの二枚貝が繁栄していた。恐竜の時代が終わると、哺乳類、鳥類、被子植物が大きく繁栄した。海中では貨幣石やビカリアが繁栄し、陸上では大型哺乳類のデスモスチルスやマンモスなどが現れた。700万年前に類人サヘラントロプスが誕生すると、アウストラロピテクス、ホモ・ハビリス、原人ホモ・エレクトスを経て、新人ホモ・サピエンスが誕生した。

地質時代の区分

 古生物を基準にした時代区分を相対年代、数値による年代を数値年代や絶対年代、放射年代と呼ぶ。このような地質時代は硬い骨格を持った生物が出現したときを境に分けられ、前を先カンブリア時代(隠生累代)、後を顕生累代と呼ぶ。先カンブリア時代は原核生物の誕生や真核生物の誕生によって、冥王代、太古台、原生代に分かれている。顕生累代は大量絶滅の磁気によって、古生代、中生代、新生代に分かれている。古生代の終わりには90%以上の種が絶滅、中生代の終わりには約70%の種が絶滅したとされる。古生代は、カンブリア紀、オルドビス紀、シルル紀、デボン紀、石炭紀、ペルム紀に、中生代は三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に、新生代は古第三紀、新第三紀、第四紀に分けられている。ペルム紀と白亜紀の終わりだけでなく、オルドビス紀やデボン紀、三畳紀の終わりにも大量絶滅は起こっている。

 地質時代を区分するには化石が用いられ、古生物の遺骸を体化石、はった跡や足跡、巣穴などを生痕化石と呼ぶ。時代を決めるのに役立つ化石を示準化石、当時の環境が特定できる化石を示相化石と呼ぶ。古生代の示準化石には三葉虫やフズリナ、中生代の示準化石にはアンモナイトや恐竜、新生代の示準化石にはカヘイ石やビカリア、デスモスチルスなどがある。示相化石にはサンゴや針葉樹などがあり、サンゴなら暖かい海、針葉樹なら寒冷地であったことが分かる。示準化石を用いると、離れた地層が同じ時代の地層であるかどうかを調べることができる。これを地層の対比と呼ぶ。地層の対比には火山灰を含んだ層などが有効で、このような層を鍵層と呼ぶ。火山の噴火は短期間で起こり、広範囲に火山灰が堆積するからである。

地球環境の変遷

 地球に海洋ができると大気中の二酸化炭素が溶け込み、石灰岩として堆積していく。38億年前の堆積岩が見つかっていることから、そのころにはすでに海があったことが分かる。シアノバクテリアが誕生すると、光合成により海水中に酸素が供給されていく。シアノバクテリアは炭酸カルシウムを沈殿させ、縞状のストロマトライトを作った。また、海水中の酸素は鉄と化合して酸化鉄になり、海底に堆積して縞状鉄鋼層ができた。原生代には全休凍結が3度起こった。大気中の酸素が増加すると成層圏にオゾン層が形成され、シルル紀には生物が陸上に進出できるようになった。古生代の大量絶滅は、大規模な火山活動によって温暖化が進み、海洋の循環が滞って海面の酸素が海底に運ばれなくなったことが原因と考えられている。これを海洋無酸素事変と呼ぶ。中生代に入ると酸素濃度が急激に下がり、二酸化炭素濃度が上昇した。こういった環境の中で、気嚢という呼吸器官を身に着けた恐竜が繁栄した。恐竜から進化した鳥類も気嚢を持っているため、酸素の少ない上空へ飛んでいける。白亜紀になると二酸化炭素濃度がさらに上昇し、温暖な環境となった。海洋無酸素事変が何度も生じ、多くの海生生物が絶滅している。されに、6600万年前に直径10kmほどの小惑星がユカタン半島東方に衝突し、地球環境が大きく変わって大量絶滅が起こった。古第三紀の始新世には温暖化が生じたが、その後寒冷化する。第四紀からは氷期と間氷期が約10万ねん周期で入れ替わる氷河時代となっている。これは、歳差運動や自転軸の変化、公転軌道の離心率の周期的な変化による日射量の変動が原因であると考えられている。これをミランコビッチ・サイクルと呼ぶ。

恐竜の分類

 恐竜は直立歩行に適した骨格を持った爬虫類のことで、2億3000万年前に誕生した。骨盤の形がほかの爬虫類と異なっているため、体重をしっかり支えることができた。他の爬虫類は、身体から横向きに足が伸びていることが多い。似た動物の翼竜や首長竜は、足が身体の横に伸びているため恐竜ではない。また、恐竜や翼竜が硬い殻に覆われた卵を産む卵生だったのに対し、魚竜や首長竜、モササウルスは赤ちゃんを産む胎生であったこともわかっている。

 恐竜は骨盤の恥骨の向きにより2種類に分類され、恥骨が前向きのグループを竜盤類、後ろ向きのグループを鳥盤類と呼ぶ。竜盤類はさらに、アロサウルスのような獣脚類と、アパトサウルスのような竜脚形類に分類できる。獣脚類から鳥類が誕生したと考えられている。竜脚形類は、三畳紀に誕生したプラテオサウルスのような原竜脚類と、ジュラ紀以降に誕生した大型のアパトサウルスのような竜脚類に分類される。鳥盤類は、ステゴサウルスやアンキロサウルスのような装盾類、イグアノドンやパラサウロロフスのように二足歩行をしていた鳥脚類、トリケラトプスやパキケファロサウルスのような周飾頭類に分類される。装盾類のうち、ステゴサウルスは剣竜類、アンキロサウルスは曲竜類に分けられ、周飾頭類のうち、トリケラトプスは角竜類、パキケファロサウルスは堅頭竜類に分けられる。

堆積の過程

 地表が河川などの流水や雨、風、波、氷河などによって削られることを侵食と呼び、岩石が大気や水などによって破壊されたり性質が変化する作用を風化と呼ぶ。水の凍結膨張や温度変化による鉱物の膨張率の違いなどによって岩石が破壊される風化を物理的風化、地下水や雨水によって岩石が分解される風化を化学的風化と呼ぶ。風化や侵食によってできた礫、砂、泥などをまとめて細切粒子と呼び、これらは大きさによって区別されている。礫は2mm以上、砂は1/16mm~2mmである。砕屑粒子は流水などによって侵食され、運搬され、堆積する。どの作用が生じるかは粒子の大きさと流速によって決まっており、運搬されている砕屑粒子は大きな礫から順に堆積していくが、堆積している砕屑粒子で最も運ばれやすいのは砂である。

 川の上流では川底を削る下方侵食がさかんでV字谷が形成され、下流では川幅を広げる側方侵食によって三日月湖が形成される。氷河が占める谷では、U字谷や、スプーンでえぐったような形のカールができる。河川が産地から平野に出たところに砕屑粒子が堆積すると扇状地ができ、川の下流で堆積すると三角州ができる。海底に土砂が堆積すると大陸棚ができ、沖合の大陸斜面には海底谷ができる。海底谷で水と土砂がまじりあった流れを混濁流と呼び、広い範囲に砕屑粒子を堆積させる。

 堆積物が固まったものを堆積岩と呼び、堆積物が堆積岩になる作用を続成作用と呼ぶ。続成作用により、礫は礫岩に、砂は砂岩に、泥は泥岩になる。火山灰は凝灰岩に、炭酸カルシウムが主成分のフズリナやサンゴは石灰岩に、二酸化ケイ素が主成分の放散虫などはチャートになる。火山砕屑物が堆積してできる岩石をまとめて火山砕屑岩と呼ぶ。

地層の形成

 堆積物や堆積岩が層状に重なっているものを地層という。類似の堆積物が水平方向に広がり、上方へ重なっていくことで地層が形成される。地層が堆積した順序を層序と呼び、同じ堆積物からなる地層の最小単位を単層、単層と単層の境を層理面と呼ぶ。普通は下位の地層ほど古く、上位の地層ほど新しくなっている。これを地層累重の法則という。連続的な地層の重なりを整合と呼び、地層の間に隔たりがある場合を不整合と呼ぶ。不整合はその面が侵食されたことを示し、下層が堆積した後、隆起や沈降といった環境の変化があったことが分かる。不整合面の直情には基底礫岩と呼ばれる礫岩が見られ、これは不整合面を見つける目安となる。地層は、地殻変動や造山運動によって傾くことがある。層理面と水平面との交線の方向を走向、層理面と水平面とのなす角を傾斜と呼ぶ。これらはクリノメーターを使って知ることができる。地層や堆積岩に残されている粒子の大きさや流れの作用の違いによって生じた模様を堆積構造と呼ぶ。地層の中で、粒径が上に向かって小さくなる構造を級化層理と呼ぶ。級化層理は混濁流の中で形成される。単層内に見られる細かい縞模様は葉理と呼ばれ、地層面に斜交する葉理を斜交葉理(クロスラミナ)と呼ぶ。斜交葉理は砂が運搬される際にできる漣痕(リプルマーク)の内部構造で、下に凸な模様になることから地層の上下を判定することができる。これらは数cmの大きさだが、メートル規模のものはサンドデューンや斜交層理とも呼ばれる。

日本列島の構造

 日本列島は弧の形をしており、火山前線付近を火山弧、それよりも海溝側を前弧、大陸側を背弧と呼びます。このようなプレート境界を島弧-海溝系と呼び、陸側プレートの先端で海洋プレートが剥がれ落ちて、付加体が形成されます。前弧には火山のない隆起地帯があり、その沖合には陸から運ばれた砕屑物が堆積しています。これを前弧海盆と呼びます。また、沈み込むプレートの岩石や堆積岩が深部に引きずり込まれると、低温高圧型の変成作用が起こります。一方、火山弧の地下は温度が高いので、高温低圧型の変成作用が起こります。

日本列島の土台は、主に花崗岩質の深成岩からなる厚さ約40kmの大陸地殻ですが、その上部は堆積岩や火成岩、変成岩の層になっており、この層を基盤岩と呼びます。日本列島の基盤岩は、もともと大陸縁にあった古い層と、プレートが沈み込むようになった後に形成された付加体の層に分類できます。

 

日本列島は地質構造の違いによって、糸魚川―静岡構造線で分けることができます。西南日本の基盤岩は、付加体を構成する岩石が東西に長く帯状に配列され、古いものほど大陸側に分布しています。西南日本はさらに、中央構造線によって日本海側の内帯と、太平洋側の外帯に分けられます。東北日本の基盤岩も付加体から構成されていますが、新生代の地層で覆われており、西南日本ほど詳しいことはわかっていません。さらに、多くの断層運動によって断ち切られているため、西南日本ほど付加体の帯状模様が顕著ではありません。棚倉構造線と呼ばれる古い時代の東北日本と南西日本の境界があり、日本海の形成時に活動しました。西南日本から続く中央構造線という断層は、伊豆半島付近で大きく屈曲しています。この付近はフォッサマグナと呼ばれ、岩石や地層の変形の不連続帯となっています。

日本列島の歴史

 約7億年前、超大陸ロディニアが分裂し、新しい大陸の縁に日本が生まれました。隠岐地方や飛騨山地には、古生代末の片麻岩が見られます。日本最古の岩石は約18億年前の変成岩で、島根県津和野町で見られます。続いて、約5億年前には、南中国地塊の太平洋側にプレートの沈み込みが現れました。海洋プレートが活発に沈み込むことで、次々に付加体が形成されました。付加体の一部は、深部に引きずり込まれて低温高圧型変成岩になりました。約48000万年前に片岩となった付加体が、徳島県や京都府の大江山に見られます。海溝より陸側には火山弧が作られ、その地下ではマグマだまりが冷却、固結して花崗岩体が作られました。日本最古の花崗岩は約5億年前のもので、熊本県八代などで見られます。約2000万年前~1500万年前になると、アジア大陸の東縁の大陸地殻が裂けて広がりました。その中に複数の海嶺ができ、玄武岩質の海洋地殻が生まれました。それに伴い、日本は大陸から離れて南に移動し、日本海ができて現在の島弧になりました。日本海が開き始めると、伸長力によって多数の正断層が生じ、浅い海底で激しい火山活動が起こりました。この時期の流紋岩や安山岩の鉱物は熱水と反応して緑色を帯びることが多いため、グリーンタフと呼ばれています。また、海底での火山活動にともなって、銅や鉛、亜鉛に富む黒鉱鉱床ができました。約7万年前から始まる最後の氷期には海水面が100m以上低下しており、氷結した海峡から動物や人類が移動してきました。約7000年前は温暖で、最も海水面の高い時期だったため、日本列島の海岸付近の平野には内陸まで海が入り込みました。縄文時代のできごとなので、これを縄文海進と呼びます。