定積分と極限


 微分してf(x)になるような関数F(x)(原始関数)を求めることを積分といった。これとは別に、範囲を決めてグラフの面積を求めることも積分という。これらを区別するために、前者を不定積分、後者を定積分と呼ぶことにしよう。

定積分


 ある関数f(x)の不定積分を

と書いたとき、f(x)のグラフの面積は、F(x)に等しい。

 だから、x=a~bの範囲のグラフの面積Sを考えてみると、F(b)とF(a)の差になっていることが分かる。

これは関数F(x)にaとbを代入して引き算するということなので、この計算を

と表そう。また、今はx=a~bの範囲にしぼってf(x)を積分するということだから、これを

と表すことにする。このような積分を定積分という。ただ、式を立ててから結果を求めるまでの流れは今の逆で、

になる。

 

練習

 f(x)=2x+3を、x=2~5の範囲で積分せよ。

定積分のイメージ


 定積分の計算の仕方は分かってもらえただろうか。次は定積分の式の意味を考えてみよう。いま、高さf(x)、幅dxの長方形の面積を計算すれば、

になる(上図)。ここでx=a~bの範囲のグラフの面積は、いま求めた細長い長方形の面積をx=a~bの範囲で足し合わせることで求められる。この内容を積分記号を用いて

と表現する。

 今後、物理では何度も定積分のお世話になるので、簡単なイメージを紹介しておこう。まず、dxやdtのように頭にdが付いているものはxやtの微小変化量を表す。そしてこの微小量をa~bの範囲で足し合わせることを「定積分する」というのだ。

 例えば、東京から大阪までの距離s[m]を測るために、長さds [m]のものさしを用意したとすれば、あとはこのds[m]という長さを東京から大阪までひたすら足していけばいい。これを、

と書いたりするわけ。dのついた物理量と、∫の意味はなんとなくでもイメージできただろうか。特に∫の方は、ただの足し算だと思えば抵抗感も小さくなるのではないだろうか。

極限


 f(x)=1/xのグラフをx>0の範囲で考える。このグラフは、xがどんどん大きくなるにしたがって0に近づいていく。この内容は

と書くことができる。このように、グラフがある1点に定まっていくことを「収束する」といい、このときの結果を極限という。

 また、今度はxをどんどん0に近づけていく。すると、このグラフは際限なく大きくなってしまう。この内容を

と書く。このように、いつまでもグラフが1点に定まらないことを「発散する」という。このときの極限は∞だといえる。ところで、sinxやcosxをx→∞に飛ばしたときもこの値は1点に定まらないが、この場合は特に「振動する」という。

 

練習

・f(x)=(2x+1)/x について、x→∞のときの極限を求めよ。

 

・f(θ)=sinθ/θについて、θ→0のときの極限を求めよ。

→半径1の円弧の長さは、弧度法を使うとθである。

  • 弧度法は、半径1の円弧の長さをそのまま角度として採用したもの。詳しくは「等速円運動」で説明する。

 上の図より、θとsinθとtanθのあいだには、

という大小関係が成り立っていることが分かる。次に、tanθ=sinθ/cosθであることに注意して全体をsinθで割って、

分母と分子を入れ替える。

θ→0のとき、cosθ→1であるから、このときsinθ/θは1と1の間にはさまれていることになる。よって、明らかに

である。

sinθの微分


 いま導いた関係を使うと、sinθやcosθの微分をすることができる。そこでまずはsinθを微分してみよう。微分の定義より、

分子を加法定理で変形すると、

ここで、

だから、この値はΔθ→0のとき

であることが分かる。ただし、

を利用した。以上より、

cosθの微分


 続いてcosθの微分をしてみよう。微分の定義より、

分子を加法定理を用いて変形すると、

よって、

と計算することができる。

 まとめると、

これから何度も出会うことになるので、覚えておくと便利。