マクスウェルと電磁波


ギルバート(1544~1603)

 電気の歴史は古く、紀元前600年ごろには、琥珀がちりやほこりを引き寄せることが知られていた。私は琥珀と同じように、ガラスや樹脂、硫黄にも似た性質があることを発見したよ。この性質を電気と呼ぶことにしよう。

 磁石には2つの磁極があり、一方が北を指すことは、13世紀にはすでにペトルス・ペレグリヌスの本で記されていた。しかし、どうして北を指すのかが分からない。北極星に引っ張られているだとか、北極に巨大な山があってその山頂を指しているだとか言われている。しかしどちらの説も、北へ行くほど磁針のN極が下を向くことの説明がつかない。いや待てよ、もしかして北極の地面の下にはS極があるんじゃないか? つまり、地球は巨大な磁石になっているんじゃないか?

フランクリン(1706~1790,アメリカ)

 私は嵐や竜巻、そして雷の研究をしています。大航海時代には、船のマストに雷が落ちるという被害がたびたびあり、恐れられていました。雷は神の怒りだという人もいますが、私は自然現象だと確信しています。こちらを見てください。ライデン瓶と呼ばれる電気を貯める装置に電気を貯め、2つの電極を近づけると、こうして小さな雷が起こります。もしも雷を捕まえてこのライデン瓶に蓄えることができれば、雷が電気現象であることがわかるでしょう。私は今度、雷を凧に落としてライデン瓶に貯める実験をしようと思っています。

クーロン(1736~1806,フランス)

 フランクリンの実験は上手くいき、彼も無事でした。彼の功績が、避雷針の開発につながったんですよ。ところで、磁石のN極とS極は引き合い、N極どうし、S極どうしは反発し合いますよね。デュ・フェさんはガラスと樹脂が持つ電気は性質が異なることに気づき、これをガラス電気、樹脂電気と呼びました。帯電したガラスや樹脂が持つ電気をプラス、マイナスと呼ぶことにしたのは、さきほどのフランクリンさんなんですよ。

 私は、電気によるこの力が距離の2乗に反比例するのではないかと考え、実験を行いました。ねじればかりを用いて電気を帯びた物体どうしが反発する力や、引き合う力の大きさを計測したんですよ。磁気についても同じような仕組みで実験したところ、電気と同じく距離の2乗に反比例していることが分かりました。電気と磁気による力が同じ規則に従っているなんて不思議です。

ガルバーニ(1737~1798,イタリア)

 大発見だ! 固定したカエルを解剖してたらカエルの足がぴくぴくした。きっと動物の体内には電気を作り出す性質が備わってるんだ。これを動物電気と呼ぶことにしよう。

ボルタ(1745~1827,イタリア)

 ガルバーニさん、すごい発見ですね。ただ私は解剖に使用した金属製のメスに秘密がある気がしています。私はガルバーニさんの実験を振り返り、2つの異なる金属をカエルに当てていたことに注目しました。そこで、2種類の異なる金属板で塩水を含ませた紙をはさんでみたところ、電気が発生したのです。それに、ライデン瓶から取り出せる一瞬の電気とは異なり、この装置から得られる電気はしばらく流れ続けました。2種類の金属板を交互に重ねることで、電気を大きくすることも可能でした。

エルステッド(1777~1851,デンマーク)

 デービーは電流を使った電気分解によって、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどを得ることに成功しました。オームは電池の数と電流の間に比例関係があることを発見しました。ジュールは導線での発熱量が電流の2乗に比例することを発見しました。ボルタが発見した電池によって、次々に新しい発見があったのです。

 私は落雷が起こったときに磁針が反応することに注目しました。導線を流れる電流も磁針に力を与えるのではないかと考えたのです。大学で学生を相手に実験を見せていたとき、電流を流した導線の近くに置いていた磁針がついに動いたのです。はじめは電流から広がるように力が生み出されると思っていたので、導線の横に磁針を置いていました。ところが磁針は動かず、導線の下に置いたときに磁針は動いたんですよ。

アンペール(1775~1836,フランス)

 平行な導線に電流を流すと、導線の間に力がはたらくことがわかったよ。電流が同じ向きなら引き合い、反対向きなら反発し合うんだ。電流と磁石の間だけでなく、電流どうしの間にも力がはたらくなんて面白いよね。それから、磁針が電流から受ける力の向きは、電流を中心に回転しているように見えることがわかった。ねじが向いている方を電流の向きとすると、このねじが回るような向きが磁針にはたらいている力ということだよ。また、導線を円形にして電流を流すと、磁石とそっくりな性質を示すことも分かった。もしかしたら磁石の中には小さな円形電流が流れているのかもしれない。

マイケル・ファラデー(1791~1867,イギリス)

 磁針を置く場所を変えていた時、電流のまわりを回転している磁力の線が見えました。磁針は電流が作ったこの磁力の線から力を受けているのではないでしょうか。この磁力の線の空間を磁場と呼ぶことにしましょう。アンペールが発見した電流の間にはたらく力は、一方の電流が作り出した磁場からもう一方の電流が力を受けていると考えることができます。電流が磁場から力を受けることを利用して、私はこのような電磁回転装置を作りました。また、電流が磁場を作るなら、磁場が電流を生み出すのではないかとも考えました。鉄心に導線を巻き付けたコイルに電流を流すと磁石になることは、ウィリアム・スタージャンが発見していたので、これを利用しました。鉄心に2つの導線をまきつけてコイルを2つ作り、一方のコイルに電流を流すと磁石になるので、もう一方のコイルにも電流が流れるのではないかと考えたのです。はじめは上手くいきませんでしたが、実験をはじめるときと終わるとき、スイッチを入れたり切ったりするときに2つ目のコイルに電流が流れることを見つけました。このことから、磁場が変化することで電流が生まれるということがわかったのです。

マクスウェル(1831~1879,イギリス)

 彼が見つけたこの現象は、電磁誘導と呼ばれています。彼は多くの実験を行い、たくさんの発見をしました。ところが、彼には数学の能力がそれほど高くありませんでした。そこで、彼の実験結果を私は数学の言葉で表すことにしたのです。すると新しい発見がありました。エルステッドやアンペールは、電流が流れれば周囲に磁場が生まれることを見つけました。ファラデーは、磁場が変化すると電流が生まれることを見つけました。私はこれらを発展させ、磁場が変化すると電場が生じ、電場が変化すると磁場が生じると考えたのです。すると、電場や磁場が空間を波のように伝わっていくことになります。私はこの波を電磁波と呼ぶことにしました。