ストーブが温かいのは、熱が電磁波として空間を伝わってくるからである。この現象を熱放射という。太陽のエネルギーが真空中を伝わるのは熱放射によるもので、特に太陽放射という。
ストーブは電熱部分が赤く輝き、遠赤外線と呼ばれる波長の長い赤外線が発生することで温かく感じる。色は温度によって決まっており、温度が高くなると青白くなる。また、生じる電磁波の波長は1つだけでなく、いろいろな長さを含んでいる(上図)。
ただし、物体からやってくる電磁波には熱放射によるものだけでなく、普通は反射波を含む。そこで、熱放射のみを考えるために、光をすべて吸収して反射しない理想的な物体を考えてみよう。このような物体を黒体といい、黒体による熱放射を黒体放射という。
可視光線の99%以上を吸収する黒体に近い物体はあるが、それでも100%ではないし、可さらに言えば視光線以外の電磁波は反射してしまう。そこで、小さな穴の開いた上図のような空洞を考える。空洞による熱放射を空洞放射という。空洞であれば、外部から入射した光は内部で反射するうちにすべて吸収されるため、再度外に現れることはない。このような実験によって得られたグラフが上図というわけだ。
黒体放射(空洞放射)の研究結果をいくつか紹介しよう。1879年にシュテファンは、「黒体から放出されるエネルギーは、温度の4乗に比例する」ことに気付いた。
この式は、1884年に導出に成功したボルツマンの名前を加えてシュテファン・ボルツマンの法則と呼ばれている。
また、一番上のグラフを見ると、ピーク部分の波長は、温度が高いほど短くなっていることが分かる。この関係は反比例である。
これをウィーンの変位則という。
ウィーンは、1894年に、観測によって得られたグラフは、次のように与えあられれば適合すると発表した。
これをウィーンの放射法則という。
続いてレイリーは、1900年、統計力学の考え方を用いて次のような式を発表した。
この関係は、その後、改良を加えたジーンズの名前を加えて、レイリー・ジーンズの法則と呼ばれている。
グラフを見比べてもらうと分かりやすいが、ウィーンの放射法則は、観測結果と短波長の部分でよく一致している。レイリー・ジーンズの法則は、長波長部分ででは一致している。
このことは、横軸を周波数にしたグラフを見ると分かりやすい。ウィーンの放射法則は、周波数が大きな部分でよく説明できているが小さくなると合わなくなり、レイリー・ジーンズの法則は、0に近い部分で説明できているが、すぐに発散してしまっている。
この問題を解決したのがプランクである。プランクはまず、ウィーンの放射法則を次のように表した。
ここで、”気まぐれに”分母から1を引いたところ、ピタリと観測結果と一致したのである。
実際は助手や学生が見つけたということのようだが、プランクはその後、この式を理論的に導くことに成功した。これをプランクの法則という。プランクはこの式の導出過程で、「電磁波はとびとびの値しか持つことができない」という仮説を立てている。この仮説をプランクの量子仮説と呼ぶ。